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平成29年1月1日施行!育児・介護休業法の改正のポイント(後編)

弁護士の佐藤です。

当事務所のコラム「Think Time!」の第3回は、前回に引き続き、平成29年1月1日から施行される、育児・介護休業法の改正のポイント(後編)をお届けします。

>>前回のコラム(前編)はこちら<<

1 その他の改正について

ポイント⑤:有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和

法改正により、有期契約労働者の方については、以下の要件を満たせば、育休の取得が可能なように要件が緩和されました。

① 申出時点で過去1年以上継続し雇用されていること

② 子が1歳6か月になるまでの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこと

※ ②については、わかりにくい表現ですが、要するに、雇用契約があるか否かが不明であっても、要件を充足するということです。

なお、介護休業の取得要件は、次のようになります。

① 申出時点で過去1年以上継続して雇用されていること

② 介護休業を取得する日から9か月経過する日までの間に雇用契約がなくなることが明らかでないこと

ポイント⑥:子の看護休暇の取得単位の柔軟化

法改正により、子の看護休暇について、半日(所定労働時間の2分の1)単位での取得が可能となりました。

※ 子の看護休暇=小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(日々雇用される方を除きます。)は、1年5日(子が2人以上の場合は、10日)まで、病気、けがをした子の看護又は子に予防接種、健康診断を受けさせるための休暇の取得を可能とする制度。

ポイント⑦:育児休業等の対象となる子の範囲

法改正により、育児休業などが取得できる対象が、特別養子縁組の監護期間中の子、養子縁組里親に委託されている子等新たに加えられました。

※ 育児休業の他、次の制度の適用対象も上記と同様に拡大されました。

① 子の看護休暇

② 所定外労働の制限(残業の免除)

③ 時間外労働の制限

④ 深夜業の制限

⑤ 所定労働時間の短縮措置

ポイント⑧:マタハラ・パタハラなどの防止措置の新設

法改正により、以下の点が変わります。

① 事業主のみならず、上司・同僚からの、妊娠・出産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせ等(いわゆるマタハラ・パタハラ等)を防止する措置を講ずることを事業主へ新たに義務付けました。

② 派遣労働者の派遣先にも次の規定を適用する。

ア 育児休業等の取得等を理由とする不利益取扱いの禁止

イ 妊娠・主産、育児休業、介護休業等を理由とする嫌がらせ等の防止措置の義務付け

マタハラ(マタニティ・ハラスメント)については、最高裁判決も出ており、対策が急務とされてきた分野でもあります。

(裁判所ホームページ)http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=84577
(日本經濟新聞)http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG17H92_X11C15A1CC1000/

2 旧法との関係

介護休業の法改正に関する経過措置規定はありません

したがって、平成29年1月1日以降は、改正後の要件を満たしていれば、介護休業の取得が可能です。
法改正後に介護休業が取れなくなる場合は、次の2つです。

① 当該対象家族について3回の介護休業をした場合

② 当該対象家族について介護休業をした日数が93日に達している場合

3 まとめ

育児・介護休業法は、企業や事業所の規模や業種を問わず適用される法律です。
したがって、今回の法改正により事業者は、就業規則等の変更をするといった対応が急務といえます。

なお、厚労省も今回の法改正を受けた事業者向けの規則例等の情報を公表しています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html

しかし、これらの規則例は、あくまで一般的なものですので、個別の事業者にフィットした内容になっているとは必ずしもいえません。
また、規則を変える際に、どのような手続きや届出が必要か、という点について十分に理解している方も多くないと思われます。

今回の改正法は、育児や介護といったデリケートな問題に関するものです。
したがって、改正法に違反した事業者の行為は、単に法律違反であるにとどまらず、法的な保護に値する精神的苦痛を労働者に与えたものとして、損害賠償請求をされる可能性も十分あると思われます。
また、介護や出産・育児を原因とする差別的取扱いに関する裁判例も多数存在するところですから、慎重かつ正確な対応が求めれます。

これらの観点から、未対応の事業者の方々は、一度専門家に相談をすることをお勧めします。

>>労使間の問題について弁護士に相談する<<

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